2010年 01月 26日
自民党の政策 |
第77回 自由民主党 平成22年度1月24日
自民党の政策方針
自由民主党政務調査会長 石破茂
政策報告
Ⅰ.はじめに
わが党は、昨年の衆議院総選挙において大敗北を喫し、結党以来、初めて比較第一党の地位を他党に譲ると同時に、野党に転落した。
敗北の要因は、わが党の旧態依然たるイメージが、「政権交代」とのスローガンを払拭できなかったことにある。身内に甘く自らを律しない、国民の痛みを理解していない、そのような自民党の「態度」に国民は嫌気がさしたのである。
われわれはこのような敗北の要因を真摯に反省しなければならない。そして、まず「自民党は変わった」との印象を国民に持っていただき、「自民党の言うことを聞いてみようか」というお気持ちになっていただかなければならない。
そのためには、党を挙げて国民との接点を多く持ち、集会、メディア、街頭などあらゆる機会を捉えて真摯にわれわれの訴えを続けることが必要である。
ゆえに、政務調査会が担う役割は以前にも増して重要となっている。国会における論戦は反転攻勢に向けて政府・与党と対峙する主戦場であり、ただ「反対のための反対」ばかりの野党に堕することなく、実現可能性と一貫性のある政策を、法律、予算、財源のパッケージとして提示し、迅速かつ分かりやすい形で絶えず発信しなければならない。
Ⅱ.今後の主な重要政策
今後、われわれとして重視していく政策としては、①経済・財政、②日米同盟管理、③政治主導のあり方――の3つが挙げられる。
【経済・財政】
一昨年のリーマン・ショック以降、わが国経済は、依然として予断を許さない状況が続いている上、司令塔不在の鳩山内閣の経済財政政策の迷走によって「二番底」「鳩山不況」が現実味を帯びつつある。
わが党はこれに対し、現下の経済状況を正確かつ詳細に把握した上で、今年度及び来年度へ向けてマクロとミクロ両視点からの自律的、持続的、現実的な総合経済対策を国民の前に明らかにしてゆく。
【日米同盟管理】
わが党は戦後の安全保障の基盤として、日米安全保障条約に基づいた同盟関係を注意深く管理してきた。「ともに戦う」同盟ではなく、「日本のために戦う」ことと「米軍に基地を提供する」ことを双務関係とする類例のない同盟であるからこそ、その維持・向上には一層の努力が必要なのであり、鳩山内閣の無神経かつ稚拙な態度は、わが国の安全保障を根幹から危うくするものとなりかねない。
わが党は普天間基地移設問題の解決に、今後とも積極的に関与し、日米安全保障条約締結50周年の本年に、わが国として自国、地域、そして国際社会の安全保障のために何をすべきかにつき、明らかにしてゆく。
【政治主導のあり方】
鳩山政権と民主党は発足直後から政治主導を強調してきたが、それは本来の政治主導のあり方から大きく逸脱しつつある。「憲法に三権分立の規定がない(から立法と行政は一体的に運営されていい)」「官僚による国会答弁を禁止する」「陳情窓口を民主党幹事長室に一本化する」等の方針・指示は、政治主導という言葉で覆い隠された一党独裁的な政治支配への布石であり、わが国の憲法に照らし合わせても大きな疑義があることは明白である。
わが党は昨年末にこうした政治主導の問題点を指摘、そのあり方について緊急提言を行い、国民一般に広く「真の政治主導とは何か」を問いかけた。今後、様々な場面で、政府・民主党が掲げる政治主導の問題点を検証、検討し、「真の政治主導」の確立に努める。
Ⅲ.各論
【財政】
政府は昨年末、平成22年度予算案を閣議決定したが、民主党マニフェストで明記していた『国の総予算207兆円を全面組み替え』とそれによる財源捻出は画餅であったことが明らかになり、平成22年度の新規主要政策の経費(7.1兆円)も公債発行にあっさりと依存することとなった。
わが国は債務残高対GDP比が約170%という先進国に例を見ない危機的な財政状況に直面しており、健全化目標とその行程を示すことが国家の財政運営に対する信頼回復、不況の脱却にも不可欠と考える。中長期の財政運営や財源問題について、徹底的に政府・与党を問いただしてゆく。
【税制】
わが党は昨年12月11日に「平成22年度税制改正に関する基本的考え」をとりまとめ、消費税を含む税制の抜本改革を最優先課題とし、来年度の税制改正は、緊急性の極めて高いものについての改正にとどめるべきであるとした。しかし平成22年度政府税制改正大綱においては、税制の整合性や国・地方の税財源のあり方が全く顧慮されていない。国会審議等を通じて、税制のあるべき姿につき、政府・与党と議論していく。
【産業】
日本の産業力は依然として世界トップレベルであり、科学技術においてもトップクラスにある分野は多くあるが、「事業仕分け」において研究開発分野が軽視されるなど、その向上意欲を削ぐような方向に進んでいることを危惧する。
わが党として「日本の自信回復」につながるような提言をしていく。
中小企業の振興についても、昨年の臨時国会において強行採決で成立させた中小企業金融円滑化法の政策効果を引き続き検証しつつ、資金繰り対策の充実、さらに成長産業としての中小企業のあり方について具体策を打ち出していく。
【雇用】
子ども手当で2万6,000円もらっても、給与が5万下がれば、国民生活は向上しない。企業の活性化や輸出産業の振興、医療・介護・福祉分野等、構造改革による新規雇用開拓を一層進めるよう促していくとともに、過熱した価格競争による企業体力の低下を防ぐため、デフレ克服に全力を挙げる。
派遣で働いている労働者が安心・納得して働くことができるよう、日雇い派遣の原則禁止、常用化の促進、マージン率の公開の義務化、法違反に対する是正措置の強化等、派遣労働者の待遇改善を図るための労働者派遣法の改正を目指す。
【社会福祉】
年金、医療、福祉の社会保障費の確保は、少子高齢化社会を前提とした国民生活を安定させる上で不可欠であり、政争の具とすべきではない。与野党、当事者が一堂に会して最善の方法を検討し、出された結論については選挙の結果に拘わらず実行すべきことを提案する。将来にわたって国民にとって安心、信頼できるものとなるよう、党派を超えて議論を行い、財源問題を含めた社会保障制度の一体的な見直しを進める。
子育て支援については、現金給付に偏るべきではなく、多様な保育サービスの提供など各種の支援策がバランスよく推進され、安心して子育てと働くことの両立ができる環境整備が必要であり、党としての子育て支援策を示していく。
【社会資本整備】
デフレ下にこそ、経済波及効果の高い、あるいは災害に強い社会資本整備を行うべきである。将来のために必要な成長基盤や安全・安心基盤である社会資本の整備を進める。空港や港湾、高速道路、整備新幹線などの基幹ネットワークを整備するだけでなく、「命の道」や生活道路、通学路の安全対策等、地域生活に不可欠な道路などについても、B/C(費用便益費)にとらわれることなく、積極的に整備を進めるべく提案していく。
【外交、安全保障】
日米安全保障条約締結50周年の本年、わが国として、まず自国の防衛体制をどう構築し、今後どう発展させるのかという検証が不可欠である。新たな防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画など、わが国自身が描くべき中・長期プランをわが党として提示していく。
【地方分権等】
地方自治体については、地方税の充実、地方交付税の増額など地方財源の充実確保を図り、地方財政の建て直しを後押しする。また、分権を推進するに当たり、道州制の導入も視野に国と地方のあり方を明確化し、鳩山政権のビジョンなき「地域主権改革」を国会論戦を通じてただしていく。今年3月末に期限切れを迎える過疎法については、過疎対策特別委員会で全国17か所の過疎関係市町村を訪問して意見交換を重ねてきた。今後、各党と精力的に協議を行い、通常国会早期の法案成立を目指す。
【農林水産】
政権交代によって、構造改革に欠かせない農地集積事業や水田フル活用対策が根こそぎ削除される中、わが党は、新たな所得対策、中山間地域直接支払の制度化、漁業・水産業の地域基幹産業としての体質強化、持続可能な森林経営のあり方等、農林水産分野が有する多面的機能の評価に基づく新たな政策を大胆に打ち出していく。
【教育】
省資源たる日本の生き残りには有為な人的資源こそが死活的に重要であることを再提起し、教育を未来への投資と捉え、教育システムのあり方を提示する。
わが党は改正教育基本法の理念を実現し、全ての子供達に高い学力と規範意識を身につけさせることを目指し、教育三法の改正や道徳教育の充実、教員免許更新制度などの教育再生に対する取り組みを行ってきた。これらに対する現政権の廃止も含む抜本的な見直し等の態度は、日教組の意向に偏向しているおそれがあり、国会審議等を通じて、新政権の誤った方向をただし、引き続き教育再生に強力に取り組む。
【外国人地方参政権】
政府は通常国会において、外国人に地方参政権を与える法案を成立させようとしている。地方選挙にせよ、参政権の問題は、民主主義・国民主権等、わが国の根幹に関わる重要な問題であり、わが党として、拙速な法案成立の阻止に全力を尽くす。
【政治とカネ】
政治資金に関連し、鳩山総理、民主党小沢幹事長とそれぞれの関係者に重大な疑惑があり、当事者から十分な説明がなされていない。事実関係のみならず、政治家としての考え方など、納得できる説明が得られるまで徹底的に追究してゆく。
Ⅳ.おわりに
今夏に行われる参議院通常選挙での勝利は、政権奪還への道程において不可欠である。
「政治は国民のもの」との立党の精神に立ち返りつつ、党内の開かれた議論によってわが党の理念に立脚した政策を提示し、これを国民に真摯に訴え、「あるべき姿」を国民のみなさまとともに作り上げていくべく、政務調査会として全力を挙げる。
by naomitokashiki
| 2010-01-26 16:53